私電磁的記録不正作出・同供用

事件の基本情報

裁判所東京高等裁判所
事件番号令和1(う)948
判決日2020-06-11
分類高裁
判決種別判決

この事件の代理人

争点(判決文より)

争点は,次のとおりである。被告人が30万BTC増加行
為及び本件各行為を行ったことや,それに至る客観的な経緯に争いはなく,
関係各証拠からも認められるところ,入金がないのに口座残高を増加さ
せたこと,すなわち本件各行為により本件電磁的記録を「不正に」作った
といえるかが争われた。原審検察官は,被告人が本件取引システムの設置
運営主体であるⅯ社の意思に反し,権限の範囲内では作ることが許されな
い電磁的記録を作出したなどと主張したのに対し,原審弁護人は,被告人
はⅯ社の唯一の包括的業務執行権限を有する取締役であり,両者は人格的
に同一と扱われるべきであるから,被告人の行為はⅯ社の意思に合致し,
また,被告人は内容虚偽の電磁的記録を作出していないなどと主張した。
3 争点に対する原判決の判断の要旨は,次のとおりである。
⑴ Ⅿ社が,本件取引システムを取引上のサービスの一環として広く提
供し,これを用いた利用者同士の直接取引の成否という効果に直結す
るものとして設置運営していること(利用規約上,利用者間において口
座情報に基づく金銭及びビットコインの存在を保証することを含め,
売買のオファーが各利用者の意思でもあるとされていること)を踏ま
えると,Ⅿ社は,何の制約もなくその処理に供する電磁的記録の内容を
決定できるものではなく,法令や契約関係等により制約を受けていた
というべきである。つまりⅯ社は,本件取引システムの利用状況や性質
に反する電磁的記録を作出すべきではないとの意思を有していたと認
めるのが相当である。したがって,Ⅿ社の意思に反する作出であったか
については,この観点から検討すべきであり,本件取引システムの設置
運営者としてのⅯ社の意思は,唯一の意思決定権者である被告人の内
心の意思と当然には合致するものではない。
⑵ そこでまず,本件各行為自体がⅯ社の意思に反したかを検討する。利
用者がⅯ社の指定する銀行口座に送金した金銭はⅯ社に帰属すると認
められ,金銭に関しては,利用者の口座残高に相当する金銭がⅯ社の銀
行口座等にも存在すべきであるとはいえない。したがって,Ⅿ社の意思
が,Ⅿ社の銀行口座等における金銭の入出金があった場合に限って,本
件取引システム上の口座残高を増減させるべきであるというものであ
ったとは認められない。
⑶ 次に,本件各行為が,本件取引システムの利用状況や性質に反してお
り,Ⅿ社の本件取引システム設置の意思に反する電磁的記録を不正に
作出したものかを検討する。
ア 前述のとおり,本件各行為の目的は,30万BTC増加行為の結果
利用者間で取引されることとなった,ブロックチェーン上には存在
しない30万BTCを回収するための取引を,本件取引システムを
利用して行うことにあったから,本件各行為は30万BTC増加行
為と不可分の性質を有する

主文(判決文より)

本件控訴を棄却する。

出典

本ページは裁判所が公開する判例データに基づいています。